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東京大気汚染
公害訴訟 |
2007年5月30日,東京大気汚染公害訴訟の被害者に対して,国が東京都に対し60億円を拠出する事を決めました。 この訴訟は,ぜんそくや気管支炎などの病気の原因は自動車による大気汚染であるとして,患者が自動車会社と東京都に賠償責任を求めたものです。 | |
責任の根拠は
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この訴訟では,ぜんそく・気管支炎・肺気腫の原因が自動車の排ガスである,ということが前提となっています。
自動車排ガスが健康に良くないことは,誰でも直感的にわかるくらい明らかなことでしょう。しかし科学では,これをさらに”量”の問題として明らかにしなければなりません。 そのためにはまず,”明らかに自動車排ガスだけが原因で病気が起こっている”ことを証明し,次に”排ガスをどのくらい吸入すると,どのくらいの頻度で病気が発生するのか”という量・作用関係を明らかにしなくてはなりません。 これは疫学によって認められました。疫学とは,人の病気と生活環境などとの因果関係を調べて病気の原因を突き止める,という調査研究方法です。 大気汚染が深刻になったころ,「大気中の粒子状物質が呼吸器系の病気を引き起こすのではないか?」という議論が1970年頃から始まりました。 そして,鉄道労働者の調査,世界各国大都市での住民の調査,入院患者の研究など,実際の住民を対象に沢山の研究が試みられ(文献),その結果,今では粒子状物質と呼吸器疾患とは関連性がある,と認められています。 これが「科学的に因果関係が認められている」という状態です。 |
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残された疑問
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しかし実は科学は大事な答えをまだ得ていません。 それは,”どのくらい自動車排ガスを吸ったら病気になるのか”という疑問の答えです。 これに答えるのは非常に難しい事です。 なぜなら,病気とその原因の量的関係を見いだすことが,難しいからです。
呼吸器の病気の原因は,排気ガス中の粒子だけではありません。 最も大きな要因の一つにタバコがあります。 呼吸器病の患者から喫煙者を除くと,調査対象の人が大幅に減ってしまいます。 ほかに,アスベストのような繊維状の鉱物や,セメントなどの粉が原因の場合もあります。 家庭の綿埃でも,大量に吸い続ければ病気の原因になることがあります。 「排ガス以外に何も吸わずに病気になった」という人は,まず,いないでしょう。 実際の人は,こうした沢山の種類の原因物質を少しずつ吸い込んでいるので,厳密に「これが原因」と,何かを特定することは難しいのです。 そのため疫学の過去の論文に対しても,「結論に問題あり」とした反証的論文が出されています(別文献)。 では,人のデータ以外のものを使って,量的関係を正確に出す方法がないでしょうか? ここで別の面からのアプローチ方法を試してみましょう。 (→ 次ページ) |
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文献
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文献1:Speizer F.E. et al.(1989)Am.Rev.Respir Dis. 140 :S49-S55 文献2:Ostro B.D. (1990) Risk Anal. 10 :421-427 文献3:Schwartz J.(1999) Epidemiology 10 :17-22 |
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別文献
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文献4:Speizer F.E. et al.(1989)Am.Rev.Respir Dis. 140 :S49-S55 文献5:Ostro B.D. (1990) Risk Anal. 10 :421-427 |
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