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このページでは,リスク評価に関する専門的な説明を載せています。
リスクの定量的解釈について
 別ページのリスク評価・リスク管理の概念図では,リスク評価の最終段階がリスク判定になっており,判定の結果を使ってリスク管理が行われることになっています。 リスク管理とは,安全な社会システムの構築のために,様々な危険因子を排除・調節することです。 リスク評価の役割は,リスク管理のために有用な情報を提示する事です。 リスク管理ではその情報をもとに対策を決定します。 また実際の対策を行う前に,一般市民に意見や了解を求める場合もあり,このプロセスはリスクコミュニケーションと呼ばれる分野に入ります。
環境中の化学物質のリスク管理において重要な2点は,
  リスクの実体(エンドポイント)は何か,という事と
  リスクの大きさ,です。
このためにリスク評価プロセスで必要とされるのは, 
 
1)何が危険因子なのか(原因物質の特定),
 2)どのように危険なのか(有害性の特定),
 3)現状の危険レベルはどの程度なのか,
を判定することです。
 
定量的評価 : 数値化 の意義
なぜ数値が

重要なのか

 リスク判定として数値が必要な理由は,リスク管理プロセスに数値を使うからです。
 リスク管理においては,具体的な数値データを元に,リスクの他の側面,例えば経済的な影響や,社会の安定性などを考慮しつつ,必要な法整備を検討します。
 多くの場合,リスク管理に携わる人々は,必ずしも医学・生物学や環境化学の専門家ではありません。 ですから,毒性学上どのくらい危険であるのかは,分かりやすく数値で表す必要があります。

 健康リスク評価の基本となるのは毒性学です。 健康評価の結果は,最初は毒性学分野の専門用語を使って表されますが,リスク評価からリスク管理のプロセスに移行する時点では,専門用語から一般の人に分かりやすい言葉で言い換える必要があります。 
 (参照:
リスク評価・リスク管理の概念図
 なぜなら,リスク評価の目的は社会システムを安全に保つためのリスク管理に役立つ情報を提示することだからです。
 リスク評価の専門家は,リスク管理の専門家が,他のリスク(経済的,社会的リスク)などと簡単に比較解析できるような形で情報を出さなくてはなりません。

 定量的なリスク評価なしには,社会システムの安全性を効率的に管理することができなくなります。 
 どんな少量の化学物質でも危ない,という考え方では,ほとんどすべての化学物質を使用禁止にしなければならなくなり,その結果私たちの生活は大いに制限されて,不便な物になるでしょう。 
 もちろん,有害な物は根絶すれば一番良いに違いありませんが,そのためには膨大な費用がかかること,そしてそのために私たちの税金が使われることをを忘れてはなりません。 
 環境保全の場合,どのレベルまでが許容かを見極める作業が,実は最も重要だと言えます。
科学的方法を
 リスクの最終判断は,科学的手法に則って,できる限り正確に行われる必要があります。 

 しかし,現状のリスク評価では,多くの化学物質に関して,まだ科学的な方法に全面的に従った評価方法が確立していません。 その理由は,方法の確立がかなり難しい作業だからです。 
 しかし,学術的なリスク評価研究の方法を積極的に導入し,正確な科学情報に基づいた,化学物質のリスク評価・リスク管理を今後も推進する必要があるでしょう。
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