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ダイオキシンのリスク
発がん
リスク
 日本人が摂取している29種類のダイオキシンのうちの主要な3種類によって起こる肝臓がんのリスクは,1000万人中3人から11人程度と計算されます(詳細ページ1)。 
 他の種類のダイオキシンも含めて計算すると最大で100万人中4人くらいとなります。 ちなみに日本人が肝臓がんにかかる率は,2001年の統計によると1万人中11人程度です。
母乳の
影響
 母乳による赤ちゃんへの移行が心配されていますが,実際に子供の体に蓄積する濃度の時間変化を計算してみると,母乳による影響は粉ミルクによる影響と比較して殆ど差はありません(詳細ページ2)。
背 景
 ダイオキシンはかつて「史上最強の毒物」と言われて恐れられて来ました。その第一の根拠は,1978年に学術論文に発表された,発がん試験によるものです[参考文献1]
 
この研究は,ラットの2年間に及ぶ慢性毒性実験でした。ラットのエサにダイオキシンを少量混ぜ,2年間飼育したところ,ラットにがんが増えたというものです。このときエサ中のダイオキシンは,サリンや青酸より低濃度だったため,”最強の毒性”と言われるようになりました。 
 ダイオキシンの慢性毒性は蓄積によって起こるもので,急性毒性のサリンや青酸と単純比較することは,毒性学上おかしいといえます。また2年間はだいたいラットの寿命ぎりぎりなので,慢性試験の結果「微量で一生とり続けた場合,がん発生が増える」という解釈が最も正確です。少なくとも,「サリンより少量で死に至る」わけではありません。
致死量に
種差がある

 各動物を使った致死量実験のデータは次の通りです。
動物種 LD50(ug/kg)
ラット 22
マウス 114
モルモット 0.6
ウサギ 115
ハムスター 1157
サル 70
左の表でわかるとおり,ダイオキシンの致死量は動物種によって大きく異なることが知られています。 その原因は,排泄スピードの違い,感受性の違いなどが考えられますが,実際にはまだよくわかっていません。

表の参考データ:
「ダイオキシンのリスク評価」1998年
環境庁ダイオキシンリスク評価研究会 監修

 多くの研究の結果,次の事がわかりました。
 ダイオキシンは,
体に蓄積しやすく,特に脂肪を含む部分(皮下脂肪,肝臓)に蓄積しやすい。
ダイオキシン自身にはDNAの傷害性はないが,他の発がん物質の作用を増強する。
殆ど世界中の大気・河川・海・土壌にダイオキシンと類縁物質(PCB等)が含まれている。
ダイオキシンを摂取した動物の一部に,生殖器の成長に異変が見られた。しかし異変の程度は微細で,生殖能力を損なうという確認はされていない。
腎臓障害,体重減少,免疫系障害などが報告はされているが,これらは実験に使った動物で特有の現象である可能性もあり,人で同じ現象が出るかどうかは確認されていない。
その他

心配される

影響は?

 ダイオキシンは脂肪に蓄積しやすいため,動物体内のダイオキシンは90%以上が脂肪に蓄積しています。しかし脂肪にたまったダイオキシンが悪さをする例は,皮膚のニキビ(塩素ざそうと呼ばれる特殊な皮膚障害)以外に今のところ報告はありません。しかもこのニキビは,事故などで大量のダイオキシンを浴びた時での話です。
 このほか,化学工場の事故や戦争で使われた農薬の影響で起こった,成長阻害や奇形などの報告がありますが,その後の研究から,ダイオキシン本体の影響であるかどうか疑わしい面があります。
 またダイオキシンの一種,コプラナーPCBでは,その化学構造から成長阻害の可能性が懸念されたこともありますが,今のところ明確な悪影響の報告はありません。
 以上,現在の科学的知見から総合的に判断すると,環境中の汚染レベルによって,人になんらかの健康被害が出る心配は,殆どないと思われます。
参考文献
文献1:Kociba RJ et al.(1978)Toxicol.Appl.Pharmacol. 46 :279-303 

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