用語解説1へ

用語: 運命モデル (fate model)
運命モデル
とは?
 環境中の物質の運命予測のためのモデルです。 特殊なシミュレーション・モデルで,環境中での物質の移動・生成・消失・変化などを,その物質や周辺環境の物理化学的性質に基づいてシミュレートするものです。  
 このモデルを使うと,物質の環境中での分布や量の時間依存の変化を,実験をすることなく予測することができるという利点があります。
なぜ運命モデル
を使うの?

 環境中の物質は通常,大気や河川・海洋や土壌といった,地球上の様々な媒体(media)中に,長い時間をかけて拡散し分布します。 分布の量や移動の早さは,その物質と媒体の両方の物理化学的性質に依存します。

 このような地球上での物質の移動を,観測したりあるいは実験室で再現したりすることは殆ど不可能なくらい困難です。 まず扱う物質や媒体の量が膨大であること,そして媒体間の物質移動には数年単位の時間がかかることなどから,数人程度の実験者で行える実験ではありません。

 それでも,環境汚染の状況を把握したり,危険性を予測したりするためには,是非とも物質の移動をしらべなければなりません。 この目的のためには,コンピューター上でシミュレーションする方法が残っています。 これだと,現実には不可能な実験でも予測ができます。

例えば何が
わかるのか

 例えば,ある河の上流で流した汚染物質が,時間をかけて河を流れ,途中で希釈されながらやがて海に流れ込む状況を,予測することができます。 必要な条件は,河の流速や河幅,水底の土の状態などで,これらと物質の性質から,どこに最も物質が存在しやすいかを予測し,その割合の時間変化を予測計算するのです。 物質が脂溶性であれば,河の水より河底の泥に吸着される割合が多くなり,そうすると海に到達する割合は小さくなるだろう,という予測が成り立ちます。

 こうしたことを定量的に予測する事は,実験ではとうてい再現できません。 まず,汚染物質を大量に使わなければなりませんから,実験自体が汚染源になってしまいます。 また河を造って大量の水を流すわけですから,膨大なお金が必要となるでしょう。
 
このようにコンピューター・シミュレーションを使うと,現実にできない実験を,仮想で行うことができますし,お金もかかりません。 しかし信頼できるデータを得るためには,できるだけ現状を正確に再現できる,良好なモデル・プログラムを作らなければなりません。

用語解説1へ
 続き →

[an error occurred while processing the directive]